駒沢敏器氏が亡くなったことを知り、未読だった「アメリカのパイを買って帰ろう」を手に取った。
発売直後に買っていながら、いままでずっと読まずにいたのは、沖縄のルポルタージュだったことも理由のひとつだ。蹂躙されてきた歴史は、遠く離れて暮らしていると、感覚の上で本当には理解できないだろうという思いがあり、躊躇するのだ。
しかし、この本の切り口は、そんな重い気持ちを軽くかわす。なにより、沖縄の人たちがたくましい。そしてここには、確かに駒沢敏器がいる。
表紙には、フェンスの金網越しに見える米軍基地がモノクロ写真で入っている。タイトルの深い朱と相まって、硬派なノンフィクションを想像させる。
写真は東恩納武氏。装丁は守先正氏。
もう駒沢氏の文章が読めないかと思うと、寂しい。