「老人の食意地のきたなさは…」で始まる、大岡昇平「食慾について」。文春文庫「もの食う話」に収められた一編。
年をとると食への興味が薄くなってガツガツしない、なんてことはないと感じていたところ。
食べることは生をつなぐこと。
生への執着も、老人だからといって薄くなるわけではないと思う。
できることなら、死ぬ間際まで、あれが食べたい、これが食べたいと食欲旺盛でいたい。
しかし、まだ老人ではないのに、油物がきついと感じるようになった事実。
量より質、美味しいものを少量でも、楽しく食べて生きたい。
表紙に描かれた卵男の、ゆで卵一つを食べる幸せそうな表情。これが食の楽しさ。
装画は古知屋恵子氏、デザインは関口信介氏。