『儀式』(セース・ノーテボーム)
表紙に石庭の写真。すっと背筋が伸びる気がするのは、日本人だからなのか。表紙の右上から背にかけて、縦にストライプが入っている。背の方は黒と白なので、鯨幕を思わせ、『儀式』というタイトルは「葬式」なのかと一瞬思う。
小説の舞台はオランダ。3部構成で、最後の部で突然、楽焼がでてきて日本との関わりが生まれる。楽焼にこだわる男は、オランダとインドネシアのハーフ。インドネシアは東洋に含まれるとはいえ、茶の湯に興味を示すには、特別な理由がありそうな気がする。
遠いヨーロッパから見た、イメージだけの日本のようだ。小説全体から、理解されるのを拒み、寄せ付けない印象を受けるのは、ぼくが日本人だからなのか。
表紙に石庭を使う違和感は、そんな日本人の気持ちを表しているのかもしれない。
装丁は奥定泰之氏。