『日本の悪霊』(高橋和巳)
なぜ、いま高橋和巳を読もうとしたのか。それは河出文庫の装丁のせいだ。
上半分にモノクロ写真、中央に白抜きの太い明朝でタイトルと著者名。シンプルでありながら、森山大道氏のブレた写真が疾走感を生み、タイトルと相まってノンフィクションのような硬さと緊張感を醸し出している。
文章は濃厚だ。
舞台は1960年代。刑事と犯罪者の心理が丁寧に綴られる。一見ミステリーのようだが、謎解きに主眼をおいていないことは、だんだんわかってくる。ただただ2人の空気が重く息苦しい。これは時代によるのか、それとも人間は常にストレスを抱えてしまうものなのか。たとえ社会が変化しても。
デザインは岩瀬聡氏。