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『アイリーンはもういない』(オテッサ・モシュフェグ)

 愛される人がいる。泣いても怒っても、失敗しても許されてしまう人。

 一方で、誰からも気にされない人もいる。たぶん、こっちの方が多い。


 アイリーンは気にされない。いてもいなくてもわからない。

 本人はそう思っている。

 そんな彼女の前に、愛される同僚が現れる。奇妙なことに、アイリーンを気にかける。

 

 悪意に満ちた世界。

 アイリーンはそう感じている。だから、読んでいて気が抜けない。同僚の真意はなんだろう。


 老齢になったアイリーンが、若いときのことを語る形になっている。

 その年まで、彼女は無事なのだ。

 さまざな経験を重ね、冷静に若い自分を見つめている。

 でも、どうやって嫌悪している自分から抜け出したのだろう。


 肝心なところは語られない。

 いまいる場所から逃げ出せば、すべてが一新されると言っているようにも読める。 

 どこにいても、自分自身が変わらなければ、周りも変わらない。

 年をとる過程で、アイリーンはそのことに気づいたのだろうか。


by robinsonfactory | 2018-06-15 18:44 |

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