『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(内田洋子)
本の天近くまで覆う大きな帯。タイトル、著者名、紹介文、必要な情報がすべて入っている。
外して気づく。これは帯ではない。少し小さいカバーだ。
上にわずかに見えていた緑は、フランス装の表紙に印刷された山の写真。カバーをすべて取ると、密生する木々の間に、突如街が現れた。
「旅する本屋」とは、本の行商をしていた人たちのこと。イタリア、ヴェネツィアの古書店で、その存在を知った著者は、案内を請い山奥のモンテレッジォへ向かう。そこは住む人が少なくなり、時が止まったような村。かつては71人が本売りを職業とし、イタリアの各地へ本を運んでいたという。
本を待つ大勢の人がいた時代。
著者といっしょになって、少しずつ行商の背景を明らかにしていくドキドキ感がある。でもきっと、本が好きな人にしか伝わらない世界なのだろう。本好きというのは、いまや希少な人種なのだろうから。