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パールストリートのクレイジー女たち

 なんてことだ、トレヴェニアンだ!

 新しく翻訳本が出るなんて、信じられない。

「パールストリートのクレイジー女たち」。

 表紙はセピア調の写真。1930年代と思われるニューヨーク。通りを歩く人びとの身なりは小綺麗で、男性は中折れ帽をかぶっている。

 500ページを越える本のストーリーは、表紙だけではわかりようがないものの、良質な物語が詰まっている感じがする。帯の「どうしても、これを自分で訳したいと思ってしまった」という江國香織氏の言葉が追い打ちをかける。

 読み始めて数ページで、オールバニーという街のおかしさにつかまれ、語り手の少年と若い母、妹を身内のように感じていた。エピソードのひとつひとつが面白く、いつのまにか心の中に、深く小説の世界が形成されていた。もう離れられない。そのくらいに。

 

 子どもの時に好きだったことが、大人になってしまうと、なんでもなくなってしまったりする。かつて属していた世界が閉じてしまったと気づいても、哀しさを感じることはない。でも、そっとその世界を覗いてみると、どういうわけか涙がぼろぼろこぼれてくる、そんな小説だ。


 装丁は坂川栄治氏+坂川朱音氏(坂川事務所)。


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by robinsonfactory | 2015-07-26 12:16 | | Comments(0)
バタフライハンター

 読み終わると、不思議に旅から帰ってきたような気分になった。


 「バタフライハンター」(クリス・バラード著)は旅行記ではないが、アメリカ各地を、さまざまな人たちに会いに行く記録。タイトルのバタフライハンターのような、聞き慣れない職業の人たちに。仕事とは何か、天職とはどういうものかと疑問をぶつけながら。

 表紙を見て、ファンタジー的な要素を含む仕事なのだろうと想像したけれど、そうではなくて、厳しい現実を体験した話が並ぶ。


 仕事の選択には、さまざまな事柄を考慮しなくてはならないが、根底にあるのは、単純にその仕事が好きかどうかだろう。プラスとマイナスの両面があるなかで、ややプラスだから続けているという程度では、短い人生、もったいない。

 

 あらためて表紙を眺める。

 落ち着いた、バランスの良さ。好きなことを仕事にするというのが、かなわぬ夢ではなく、すぐ手の届くところにあるように感じさせてくれる。

 装丁はクラフト・エヴィング商會。


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by robinsonfactory | 2015-07-17 18:29 | | Comments(0)
サンカの民を追って

 十代の青年が、無計画の放浪の中で出会った人たちの話。

 小栗風葉、明治41年の小説「世間師」。

 青年がたどり着いた煤けた旅館は、六畳二間に10人近くが雑魚寝する悪臭漂う空間。垢で汚れ、じめじめしたぼろ布団にはシラミがたかる。しかしそんな宿代さえ払うことができない青年は、日銭を稼ぎながら旅をする男の世話になるのだったが。


 「サンカの民を追って」(河出文庫)に収められた一編。サンカ小説を集めた一冊だが、表紙は小説というよりノンフィクションの雰囲気。

 隣にいたのに、実態を知らない集団となれば興味がわく。何冊か本を読めば、実像らしきものは、なんとなく見えてくるものの、それでもサンカとは一体何だったのか? という疑問は漂い続ける。

 そんな隙間にサンカ小説は入ってくる。


 「世間師」をサンカ小説集に入れることが、ふさわしいのかわからない。でも、ここで読めてよかったと思うくらい余韻がある。


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by robinsonfactory | 2015-07-12 11:43 | | Comments(0)
子供時代

 この小さい本はなんだろう。

 新潮クレスト・ブックスの棚で、ひときわ目を引く小ささ。大人に混じった子どものような、それでいて間違いなくクレスト・ブックスだ。

 書店で最初に見かけた瞬間、販促用のフリーペーパーかと思った。


 リュドミラ・ウリツカヤの「子供時代」。

 表紙の絵は、やや不気味なのに、見慣れてくるとどことなく可笑しい。とても細かく、目を凝らして奥の方まで見たくなる。

 パラパラめくると、中にも何枚か絵が入っている。わくわくしながら読み進めると。

 文章と絵がリンクしていない。でもなんとなく合っているような。

 リュドミラ・ウリツカヤの文章と、ウラジミール・リュバロフの絵は、それぞれが自身の子供時代を描いたもの。それが、奇跡的に似たような雰囲気を持っているのだ。

 著者と同じ体験をしていないのに、読んでいると、不思議に自分が子どもだった頃を思い出す。

 何度も何度も手に取って、眺め、読んでいたくなる。


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by robinsonfactory | 2015-07-03 22:39 | | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
by robinsonfactory
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