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武士道ジェネレーション

 赤、青、緑の背表紙は、本棚でとても目立っている。緑の隣に紫の本を並べる。それまで広がっていたものがキュッと閉じたような感じがする。多分これで終わり。

 「武士道ジェネレーション」(誉田哲也著)。

 前作「武士道エイティーン」から6年がたち、いまごろ続編が出てくるとは思わなかった。そして、その年月分、登場人物たちは年を取り、大人になっていた。成長していた。

 成長を嬉しく思う一方、変わらない部分を見つけるとそれもまた嬉しい。親戚のおじさんになった感覚で読んでいると、あの高校生がこんなに大きくなったのかと、涙がこぼれてくるけれど、同年代のつもりで読んでいると、ぼくももっと大人にならねばと思うのだ。

 しかし、大人になることと、成長することは同じではない。対応は一般的な大人なのに、人間としてだめだなという人はたくさんいる。内面が成長することの方が難しいのかもしれない。

 イラストは長崎訓子氏。装丁は池田進吾氏。


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by robinsonfactory | 2015-08-30 11:14 | | Comments(0)
壊れやすいもの

 「壊れやすいもの」(ニール・ゲイマン著)

 色鮮やかな蝶が円状に並び、中央に、英語と日本語のタイトルと著者名。英語の書体は特徴的だが、青色の日本語の方がすっと目に飛び込んでくる。清潔で、とてもきれいな表紙。

 背も印象的で、縦に置くと日本語の本、横にすると英語の本のようだ。

 本を手に取ると、厚さのわりには軽い。小口に塗られた青いインクは、パラパラめくってみると、ところどころにじみが見える。その手作りを思わせる感じが、無性に読書欲を刺激する。

 31編の小説と詩が並び、どれも雰囲気が似ているようで違う。次はどんな世界が広がっていくのか、見当がつかない。ただ、すべてがとっつきやすいものではないので、文章の波にもまれ、想像がうまくできないこともある。そうなったら、考えすぎてはだめだ。自由に流れに身をまかせ、雰囲気を楽しむのだ。あるいは、何年後かに読み返すことで、鮮明にイメージが広がるのを期待するのだ。

 それまで、ずっと手元に置きたいと思わせるに十分なつくり。

 装丁は鈴木久美氏(角川書店装丁室)。


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by robinsonfactory | 2015-08-23 11:56 | | Comments(0)
暗いブティック通り

 古い友人に久しぶりに会って昔の話をしていると、まったく記憶にないエピソードを楽しそうに話してくる。途中で「それ、ぼくじゃないよね?」と、さりげなく疑問を口にしてみるが、間違いないと友人は自信たっぷりだ。聞いていると、確かにぼくらしい言動だけれど、まったく記憶にない。その出来事だけ、なぜかすっぽりと抜け落ちてしまっている。

 でも、本当にそれは自分なのか。そいつは一体誰だ?


 「暗いブティック通り」は、記憶を無くした男が、自分の過去を探っていく。まるで他人の人生を調べるかのように、細い手がかりをたどり、かつて自分と関わりのあったと思われる人たちに会う。記憶を無くしたことを隠し、相手に話を合わせるのは、危うく、下手をすると怪しまれて口を閉ざされるかもしれない。

 そんな微妙な空気が流れていて、ただの謎解きとは違う展開を予想させる。


 著者のパトリック・モディアノ氏がノーベル賞を受賞したとき、書店に何冊も本が並んだ。その中に、金文体という変わった書体をタイトル、著者名などに使った一冊があった。手に取ると緒方修一氏のデザイン。

 なぜこの書体を使ったのだろう。緒方氏の装丁だからなにかしら意図があるはずだが、いくら考えてもはっきりしない。それならば、読めばきっと何かしらのヒントが得られるだろう。

 しかし、読み終わっても、まだこの装丁が伝えようとしていることがわからなかった。

 読後モヤモヤ感が残る小説で、表紙を見ていても同じような気分。それが狙い?

 

 装画は吉實恵氏。


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by robinsonfactory | 2015-08-15 11:43 | | Comments(0)
古書修復の愉しみ

 所有している本が、白い紙のまま、何十年も同じ状態を保ち続けるとは思っていない。学生時代に読んでいた本のほとんどは、すでに変色して、古書店に持って行っても値がつきそうにない。

 とはいえ、捨てるには忍びない、なんとなく手元におきたい本もある。ちょっとした思い入れのためだ。


 「古書修復の愉しみ」(アニー・トレメル・ウィルコックス著)は、書籍修復家に弟子入りした女性の話。

 作業は、細かく丁寧で神経を使う様子。だが、写真やイラストなどの説明がないので、本当に理解して読めているかは疑わしい。

 そんな折り、たまたまテレビで、水道橋にある製本工房リーブルが、本の修復を行うところを見た。

 ぼろぼろの辞書、1ページ1ページを、アイロンをかけて平らにし、和紙をちぎって足りない部分をつけ足していく。アニー・トレメル・ウィルコックスの作業とは違うようだが、根気のいる仕事には違いない。

 

 修復が必要なほどヨレヨレになった愛読書は持っていないけれど、こうして直してもらったりすると、一生大事にしそうだ。それは読むためというより、ただ触り、眺めるだけの物としての本になってしまうのかもしれない。何十年も捨てられない本は、すでにそういった存在なのだろう。


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by robinsonfactory | 2015-08-01 23:21 | | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
by robinsonfactory
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