<   2017年 03月 ( 3 )   > この月の画像一覧
ハリー・オーガスト、15回目の人生

『ハリー・オーガスト、15回目の人生』(クレア・ノース著)

 振り返ってみると、ずっとカバーに描かれたイラストの世界観に支配されたまま、この本を読んできたような気がする。それほど、小説の世界とイラストは、ぼくの中でぴったり重なっていた。

 理由もわからず繰り返される人生。どんな最期を迎えようとも、決まって同じ赤ん坊として生まれてくる。前世の記憶をしっかり持ったまま。そうやって800年も生き続けることの疲労感、絶望感。世界の終わりが早まっているというメッセージを受け取り、その元凶を探し、対決する長い物語。

 カバーの、遠くを見つめる男の表情が、いつまでも忘れられない。彼の人生は、本を閉じた後もまだまだ続くのだと。

 装丁は國枝達也氏、イラストは高橋将貴氏。


[PR]
by robinsonfactory | 2017-03-26 15:07 | | Comments(0)
生成不純文学

『生成不純文学』(木下古栗著)

 サイン本と書かれ、ビニールに包まれた本を購入した。見返しに、マジックで描かれた栗のイラスト。大きな目と突き出した口が加わり顔になっている。その下にシャチハタで「古木」と「栗下」が2組押されていて、横に読むと「古栗」「木下」になる。ふざけたサインだなあと思いつつも、著者の素顔がほんの少し見えた気もした。

 この作家の小説には翻弄される。口からでまかせ、大ぼら吹きの、いい加減な野郎なのに、いっしょにいると楽しい。そんな気分とでもいうか。

 表紙は、とてもおとなしく、きれいだ。タイトル、著書名は明朝で、中央に小さくシロクマの写真。この作家のことを知らなければ、「文学」というタイトルから、きわめて「普通」の小説を想像するだろう。それで、なぜシロクマなのか。いろいろ考えた。地球の温暖化と関係ある?

 装丁は坂川栄治氏+鳴田小夜子氏。


[PR]
by robinsonfactory | 2017-03-23 22:56 | | Comments(0)
スエロは洞窟で暮らすことにした

『スエロは洞窟で暮らすことにした』(マーク・サンディーン著)

 読む前の、表紙の印象から届くささやかな希望は、読後、やや失望に変わる。表紙に写る穏やかな男の表情と背景の茶色い台地、果てしなく白い空、そしてタイトルや著者名などの要素が、とても素敵で、ひっくり返して背、表4を見ても好きな気持ちが減ることはない。

 原題は『THE MAN WHO QUIT MONEY』だが『スエロは洞窟で暮らすことにした』の方がはるかにいい。でもそれが、読む前にぼくを違った方向に導びいてしまったのだ。洞窟で暮らすことに、自給自足のユートピアのようなイメージを持ってしまったのだ。

 スエロの生き方に、共感できる部分は少ない。お金を介在させない生き方は、つまるところ、周囲の人たちの好意に支えられている。

 無駄なものは買わないなど、極力シンプルな生き方は実践できる。でも、まったくお金を使わず、環境に負荷もかけない生活というのは、社会からこぼれてしまわないと難しいだろう。社会の束縛から自由になろうと思うと、不自由な考え方に縛られる。

 ただ、栞を本の頭からちょこっと出し、机の上に何気なく置いておくと、つい手に取りたくなる、魅力的に見える本ではある。

 装丁は鈴木成一デザイン室。


[PR]
by robinsonfactory | 2017-03-07 17:53 | | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
by robinsonfactory
> 最新のトラックバック
> ライフログ
> 検索
> タグ
> ブログパーツ
> 最新の記事
橋の上の天使
at 2018-11-02 19:05
日が沈むのを
at 2018-10-23 18:56
旅路
at 2018-10-13 22:38
接触
at 2018-10-01 22:33
誰もいないホテルで
at 2018-09-21 18:32
> 外部リンク
> ファン
> 記事ランキング
> ブログジャンル
> 画像一覧