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愚か者

 『夫・車谷長吉』(高橋順子著)を買ったけれど、車谷長吉を読んだことがなかった。でも、一冊だけ本を持っている。その『愚か者 畸篇小説集』を本棚から出してみた。

 黒い函に入った本。その表紙を見て、なぜこの本を買ったのか思い出した。

 函の表1側に、タイトルを印刷した紙が貼ってある。そこにはキャッチコピー、さらに価格とバーコードも入っている。こんな変わった表紙をほかに知らない。下のバーコード部分の背景は白だが、上3分の2は黒。その中でタイトルは薄い黒で、全体の中でもっとも目立たない。むしろ「お前も勉強しないで、あそんでいると、くるまたにさんみたいになってしまうよ。」という白抜きのコピーの方が目に飛び込んでくる。

 本を抜き出していくと、水彩の自画像が出てくる。青々した頭、真っ赤な頬、焦点の定まらない瞳。それが天地いっぱいに、本の背側ぎりぎりに入っている。全部出してみると、人物画は端に寄っていて、しかもタイトルなどの文字はなく、ほとんどは白い紙のまま。黒い函とのコントラストに、もうこの本に満足してしまう。

 絵は自画像かと思っていたが、味のある題字ともに村上豊氏の作。装丁は鈴木成一デザイン室。

 読んでみると、この本一冊では、とても車谷長吉を読んだとはいえないと感じる。深い穴に落ちてしまうか、ここで踏みとどまるか。


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by robinsonfactory | 2017-07-29 12:18 | Comments(0)
あなたの人生の物語

『あなたの人生の物語』(テッド・チャン著)

 映画『メッセージ』の原作。伝えたいことが溢れ、十分にそれをくみ取れない感じがして、映画を見終わったあとすぐに原作本を手にした。

 文字だけの小説は、読む側に想像力を強いる。映像で先に見ていたので、その部分を補うことができたのだが、逆にいうと、映画を見ていなければ、ぼくには想像できない世界が広がっていた。

 この本の中には、8つの短編があり、どれもが独特の世界。SFならではの、存在しないモノが出てくるが、そのものの描写がほとんどない。概念としてはわかるが、その形状となると、どこかで見たものを適当に当てはめて考えるしかない。

 『メッセージ』が素晴らしいのは、そういった細部が丁寧で新しいこと。ぼくが映像制作に関わる人間だったら、きっと嫉妬している。

 かなわないことだが、『メッセージ』の記憶を一度消し去り、何も知らない状態で『あなたの人生の物語』を読みたい。表紙から映画の写真を取り去り、以前の表紙に戻して。でも、それでこの小説が本当に楽しめるのかは疑問だ。


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by robinsonfactory | 2017-07-13 17:56 | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
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