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ストーナー

『ストーナー』(ジョン・ウィリアムズ)

 空気が感じられる。かすかな匂いがある。それはたぶん自分が好きなものだ。たとえば書店。和紙専門店。

 心地よい香りが、いつのまにか気分をリラックスさせているように、気づくと、心の中に小説の世界が入ってきている。

 この小説は、語り続けなくてはいけない。書店はこの本を常備すべきだ。

 カバーの紙の手触り、そこにかすかに見える、本の形をしたオブジェ、タイトル文字の凹凸、その深い墨。すべてが忘れがたい、大切なものとして記憶される。

 装丁は水崎真奈美氏。


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by robinsonfactory | 2017-12-23 10:20 | Comments(0)
日本の悪霊

『日本の悪霊』(高橋和巳)

 なぜ、いま高橋和巳を読もうとしたのか。それは河出文庫の装丁のせいだ。

 上半分にモノクロ写真、中央に白抜きの太い明朝でタイトルと著者名。シンプルでありながら、森山大道氏のブレた写真が疾走感を生み、タイトルと相まってノンフィクションのような硬さと緊張感を醸し出している。

 文章は濃厚だ。

 舞台は1960年代。刑事と犯罪者の心理が丁寧に綴られる。一見ミステリーのようだが、謎解きに主眼をおいていないことは、だんだんわかってくる。ただただ2人の空気が重く息苦しい。これは時代によるのか、それとも人間は常にストレスを抱えてしまうものなのか。たとえ社会が変化しても。

 デザインは岩瀬聡氏。


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by robinsonfactory | 2017-12-16 12:19 | Comments(0)
悲しみの港

『悲しみの港』(小川国夫)

 色とりどりのストライプの背が並ぶ棚。手に取ると、ちょっとずんぐりした感じのB6サイズ。小学館のP+D BOOKSというシリーズだ。

 年配の人向けの本なのか、そう思って開くと、若干文字組がゆったりしている。紙は、P+D(ペーパーバックとデジタル)の名の通りいい感じにチープさが漂い、ガシガシと読みたくなる造り。

 渋いラインナップの中から、まだ読んだことのない小川国夫を買ってみた。

 

 とても簡単にいうと、親のすねをかじりながら、小説を書いている青年の話。文学を生み出そうと苦しんでいるのに、周囲の人たちの温かいまなざしに鈍感で、青臭い。原稿がやっと雑誌に掲載されることになるが、原稿料は出ない。一度も働いたことがなさそうなのに、肉体労働ならできると思い込む。けれども身体は弱い。

 感情移入がまったくできない主人公。ただ、恋する女性の家に押しかけ求婚するものの、娘の父親に優しく諭され、無力なまま帰宅する、あまりに不器用な姿に同情する。

 最後は、苦しまぎれの明るさが、切ない。


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by robinsonfactory | 2017-12-08 22:32 | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
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