外の世界

『外の世界』(ホルヘ・フランコ)

 なんともとらえどころのない小説、という印象。

 カバーに使われているルネ・マグリットの「深淵の花」にしても、細部から全体まで不思議さに満ちていて、いろいろ想像していくと、とりとめなくなってしまう。曖昧なまま落ち着かないので、誰かに解釈を頼みたくなる。そんな読後感。

 いくつかの時代をバラバラに語っているが、混乱はなく、ストレスも感じない。退屈を感じる隙もない。

 でも、誰の気持ちも、うまく理解できない。薄いフィルターを通して見ているようで、はっきりしない。とらえどころのなさは、きっとここにある。

 遠くで叫んでいる姿が見えるのに、声が聞こえない。読み取れない自分がもどかしい。


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# by robinsonfactory | 2018-04-27 17:43 | Comments(0)
蔵書一代

『蔵書一代』(紀田順一郎)

 昭和の初期に造られたと思われる、木製の書棚を所有している。古道具屋で購入したもので、棚を固定するための楔がアクセントになっていて、壁際にポツンとあるだけで、部屋の印象が引き締まる。

 この本棚が最初に置かれた場所は、きっと和室の畳の上だろう。腰高の小さなものなので、四畳半かもしれない。隣には文机が似合う。

 4段すべてに本を詰めても、100冊程度しか収納できない。たった100冊。けれども、厳選されたわずかな本だけを身の回りに置く生活は、とても豊かで確かなもののように思える。


 紀田順一郎氏は、年齢からくる状況の変化で、3万冊の本を処分したという。


 ぼくにとって、本当に必要な本はどれだろう。


 『蔵書一代』のカバーに描かれた本の絵は、端からぱらぱらと崩れ落ちている。地味な色合いは、古くなった本のようだ。やがて、本はこうして消えていくのだと、暗示しているのか。カバーを取って表紙を見ると、格子状の太い線が目眩を起こさせる。本の行く末を考えクラクラする。


 装丁は安藤紫野氏。


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# by robinsonfactory | 2018-04-15 12:04 | Comments(0)
オンブレ

『オンブレ』(エルモア・レナード)

 最初に読んだレナードの本は「グリッツ」で、何十年も前のことだ。その当時は、まだレナードの文庫本が何冊も書店に並んでいたから、次の1冊を手にするのが楽しみだった。

 いつの間にかレナードの本を見かけなくなり、古書店で探しても、持っている本ばかりで、人生の楽しみがひとつ消えていくのを感じていた。

 昨年末『ラブラバ』が新訳で出たけれど、すでに旧訳の方を読んでいたので、気持ちの高ぶりはなかった。

 ところが、このたび。

 本当の新刊だ。村上春樹訳、なんと西部小説。

 期待していたものと少し違ったが、先が見えなくて面白い。どちらかというと、併録された「三時十分発ユマ行き」の方が、ぼくはレナードらしさを感じた。「本人も知らなかったが、実はすごい男」という人物と、それを間近で見て驚く悪党との微妙な関係の変化が、わくわくする物語の始まりを予感させるのだが、とっても短い話で、渇望感が増してしまった。

 エルモア・レナードの本が、これからも訳され続けることを、星に願う。


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# by robinsonfactory | 2018-04-08 10:13 | Comments(0)
飛田ホテル

『飛田ホテル』(黒岩重吾)

 昭和な雰囲気のカバー。書体とイラスト、黒とピンクと。

 昭和30年代に書かれた短編6本。舞台はもちろん、作者の感覚も当時のものだから、いまからするとだいぶ古く感じられる。大衆小説として、あえて欲情的な描写を入れたのだろうから、社会の底辺にいる人たちの生活を活写するのとは違う。

 でも、ちくま文庫で復刊となれば、アカデミックな部分を探してしまうもの。アルサロ、アルバイトサロンなんて言葉は知らなかったので、勉強にはなったけれど。

 カバーデザインに惹かれて手に取った本は、よく見ると、かすかに劇画の匂いもする。娯楽として気楽に読めばいいのだろう。でも、どうしても古き悪しき時代を感じてしまうのだ。

 カバーイラストは西川真以子氏。デザインはアルビレオ。


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# by robinsonfactory | 2018-03-27 18:24 | Comments(0)
異形の愛

『異形の愛』(キャサリン・ダン)

 最後まで、この小説にどう向き合っていいのかわからなかった。

 巡業サーカスで生きる、ある家族の話。母親は、かつて鶏の頭を食いちぎるギークとして活躍し、団長とパートナーになると、奇妙な子供たちを産み出す。サーカスで生きていくために必要な、最高のプレゼントとして、奇形の身体を持つ子らを。

 物語は、その中の1人の娘が語っていく。彼女は、妊娠中に毒物を服用した母の努力の甲斐もむなしく、アルビノでせむしだけの平凡な奇形。そのことを恥じ、スターである、手足がヒレのようについている兄を慕い、ひとつの身体を共有する美しい双子を羨む。一方、五体満足な普通の人を蔑む。

 立ち位置が、普通の世界と逆で、なかなか馴染めない。この物語の世界を受け入れるということは、作中登場する、自分の手足を切り落とす信者たちをも受容することになるわけで、そこまで心は広くなれない。

 ただ、グロテスクに徹しないで、理解できないにしても愛が流れているからこそ、最後まで読み続けられる。

 怖いもの見たさのフリークショーの、禍々しさを想起させる中に、美しさをこめた装丁が印象的。

 装丁は木庭貴信氏+岩元萌氏。


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# by robinsonfactory | 2018-03-26 22:47 | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
by robinsonfactory
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