剃髪式

『剃髪式』(ボフミル・フラバル)

 石油ランプの丁寧な描写が続き、このままビール醸造所の静かな生活が描かれていくのだろう、穏やかな気持ちにさせる小説。と思っていたら、とんでもなかった。

 これどこまで本当? 小説に向けてする質問ではないが、はじけすぎて想像が追いつかない。だんだん馴れてくると、いくらか余裕を持って楽しめるけれど、さらに上をいく出来事が。

 150ページほどの薄い本のなか、何度も気持ちが動かされる。最後は、これで終わってしまうのか、やっとわかってきたところなのに。ちょっと心残りなので、もう一度最初から読み直してみる。

 幸いなことに、フラバルの本は、ほかにも新刊で手に入りそうだ。


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# by robinsonfactory | 2018-02-08 19:43 | Comments(0)
東の果て、夜へ

『東の果て、夜へ』(ビル・ビバリー)

 帯を外してカバーを眺める。赤い文字で惹句がびっしり詰まった帯は目に痛く、外すと一気に静寂が訪れた。

 誰もいないガソリンスタンドの写真。手前の道路が白く見えるのは靄か、雪か。奥の山の斜面も白いので、雪だ。

 地元のスタンドというより、どこか見知らぬ土地に来た気分。左右いっぱいに広がった「夜へ」「果て、」「東の」の文字が、まだ旅の途中という思いにさせる。

 少年たちの奇妙な旅。これから人を殺しに行くという。不安定な人間関係と、心もとない情報。案の定、トラブルだ。

 人生に疲れ果てた大人のような1人の少年は、ときおり子どもっぽさを露呈する。この小説に希望が見える気がするのは、その一瞬だ。

 何度カバーを見ても、そのたび「夜へ果て東の」と読んでしまうので、最後までタイトルを正確に覚えられずにいたが、この本のことは忘れずにいよう。ほぼ完璧な小説なのだから。

 デザインは鈴木久美氏。


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# by robinsonfactory | 2018-01-29 20:33 | Comments(0)
天国の南

『天国の南』(ジム・トンプスン)

 表紙のモノクロ写真は、古い映画の一場面のようだ。銀色の英文字は、角度によっては光って見えにくくなるので、一瞬、劣化した、本当に古い本だと感じてしまう。

 でも、ジム・トンプスンの新刊。古書店でなく、新刊書店で見つけたのに、いまこの作家の本が新しく出版されたのが信じがたく、古本を手に取るような気分だった。

 読み進めていくうちに、これは個性的な犯罪者の物語ではないのだとわかってくる。想像していた世界と違う。ぶっきらぼうな中に、ときおり、真っすぐな気持ちが見えてくる。まるで21歳そのままの文章。

 ジム・トンプスンは、こんな物語も書いていたのか。

 軽い造本もいい。膝を立てて床に座り、片手で本を開く、そんな格好がきっと似合う。

 写真はドロシア・ラング、装丁は黒洲零氏。


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# by robinsonfactory | 2018-01-19 20:18 | Comments(0)
ストーナー

『ストーナー』(ジョン・ウィリアムズ)

 空気が感じられる。かすかな匂いがある。それはたぶん自分が好きなものだ。たとえば書店。和紙専門店。

 心地よい香りが、いつのまにか気分をリラックスさせているように、気づくと、心の中に小説の世界が入ってきている。

 この小説は、語り続けなくてはいけない。書店はこの本を常備すべきだ。

 カバーの紙の手触り、そこにかすかに見える、本の形をしたオブジェ、タイトル文字の凹凸、その深い墨。すべてが忘れがたい、大切なものとして記憶される。

 装丁は水崎真奈美氏。


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# by robinsonfactory | 2017-12-23 10:20 | Comments(0)
日本の悪霊

『日本の悪霊』(高橋和巳)

 なぜ、いま高橋和巳を読もうとしたのか。それは河出文庫の装丁のせいだ。

 上半分にモノクロ写真、中央に白抜きの太い明朝でタイトルと著者名。シンプルでありながら、森山大道氏のブレた写真が疾走感を生み、タイトルと相まってノンフィクションのような硬さと緊張感を醸し出している。

 文章は濃厚だ。

 舞台は1960年代。刑事と犯罪者の心理が丁寧に綴られる。一見ミステリーのようだが、謎解きに主眼をおいていないことは、だんだんわかってくる。ただただ2人の空気が重く息苦しい。これは時代によるのか、それとも人間は常にストレスを抱えてしまうものなのか。たとえ社会が変化しても。

 デザインは岩瀬聡氏。


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# by robinsonfactory | 2017-12-16 12:19 | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
by robinsonfactory
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