失われた時を求めて 全一冊

『失われた時を求めて 全一冊』(マルセル・プルースト著)


 たった500ページほどにまとめられた『失われた時を求めて』。刻まれ、つないだ印象は否めないものの、楽しく読むことはできた。オリジナルの長さで読んだことがないので比較はできないが、この本は、手に取った人を歓迎しているような印象を与える。

 短くなっているとはいえ、500ページは長い。ほかの本だったら満腹になっているはずなのに、なぜかおかわりが欲しくなる。本来の文章から何が削がれ、雰囲気がどう変化したのか知りたくなる。

 本の姿がいい。選ばれた色、書体、線、アイコン、すべてが素敵。とくに背がよくて、この新潮モダン・クラシックスを何冊も書棚に並べておきたい。ただラインナップが微妙。


 と思っていたけれど、シリーズの「ドリトル先生航海記」を読んでみたら、あっという間に引き込まれてしまった。


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# by robinsonfactory | 2017-04-14 22:27 | Comments(0)
ハリー・オーガスト、15回目の人生

『ハリー・オーガスト、15回目の人生』(クレア・ノース著)

 振り返ってみると、ずっとカバーに描かれたイラストの世界観に支配されたまま、この本を読んできたような気がする。それほど、小説の世界とイラストは、ぼくの中でぴったり重なっていた。

 理由もわからず繰り返される人生。どんな最期を迎えようとも、決まって同じ赤ん坊として生まれてくる。前世の記憶をしっかり持ったまま。そうやって800年も生き続けることの疲労感、絶望感。世界の終わりが早まっているというメッセージを受け取り、その元凶を探し、対決する長い物語。

 カバーの、遠くを見つめる男の表情が、いつまでも忘れられない。彼の人生は、本を閉じた後もまだまだ続くのだと。

 装丁は國枝達也氏、イラストは高橋将貴氏。


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# by robinsonfactory | 2017-03-26 15:07 | Comments(0)
生成不純文学

『生成不純文学』(木下古栗著)

 サイン本と書かれ、ビニールに包まれた本を購入した。見返しに、マジックで描かれた栗のイラスト。大きな目と突き出した口が加わり顔になっている。その下にシャチハタで「古木」と「栗下」が2組押されていて、横に読むと「古栗」「木下」になる。ふざけたサインだなあと思いつつも、著者の素顔がほんの少し見えた気もした。

 この作家の小説には翻弄される。口からでまかせ、大ぼら吹きの、いい加減な野郎なのに、いっしょにいると楽しい。そんな気分とでもいうか。

 表紙は、とてもおとなしく、きれいだ。タイトル、著書名は明朝で、中央に小さくシロクマの写真。この作家のことを知らなければ、「文学」というタイトルから、きわめて「普通」の小説を想像するだろう。それで、なぜシロクマなのか。いろいろ考えた。地球の温暖化と関係ある?

 装丁は坂川栄治氏+鳴田小夜子氏。


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# by robinsonfactory | 2017-03-23 22:56 | Comments(0)
スエロは洞窟で暮らすことにした

『スエロは洞窟で暮らすことにした』(マーク・サンディーン著)

 読む前の、表紙の印象から届くささやかな希望は、読後、やや失望に変わる。表紙に写る穏やかな男の表情と背景の茶色い台地、果てしなく白い空、そしてタイトルや著者名などの要素が、とても素敵で、ひっくり返して背、表4を見ても好きな気持ちが減ることはない。

 原題は『THE MAN WHO QUIT MONEY』だが『スエロは洞窟で暮らすことにした』の方がはるかにいい。でもそれが、読む前にぼくを違った方向に導びいてしまったのだ。洞窟で暮らすことに、自給自足のユートピアのようなイメージを持ってしまったのだ。

 スエロの生き方に、共感できる部分は少ない。お金を介在させない生き方は、つまるところ、周囲の人たちの好意に支えられている。

 無駄なものは買わないなど、極力シンプルな生き方は実践できる。でも、まったくお金を使わず、環境に負荷もかけない生活というのは、社会からこぼれてしまわないと難しいだろう。社会の束縛から自由になろうと思うと、不自由な考え方に縛られる。

 ただ、栞を本の頭からちょこっと出し、机の上に何気なく置いておくと、つい手に取りたくなる、魅力的に見える本ではある。

 装丁は鈴木成一デザイン室。


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# by robinsonfactory | 2017-03-07 17:53 | Comments(0)
戦地の図書館

『戦地の図書館』(モリー・グプティル・マニング著)

 表紙には、ひとりの兵士が塹壕の中で本を読んでいる写真。リラックスした表情は、まるでカウチに横になっているかのようだ。でもこれは、第二次世界大戦時のアメリカ軍兵士の姿。

 戦場で本を読むのか? 命が危険にさらされている状況下で、本を開く余裕なんてあるのか? 荷物になる本を持っていくのか? 

 文中には、戦闘中、上空を砲弾が飛び交い、じめじめした塹壕から出るに出られず、懐中電灯の灯りで本を読んでいたという兵士の話も出てくる。

 本があることで、なぐさめになり、士気を高揚させることにもなったという。

 殺し合わなくてはならない状況というのは、想像するだけでもつらい。本を読んでいる束の間、悪魔でも虫けらでもない、普通の人間として過ごせたのだろうか。

 装丁は中村聡氏。


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# by robinsonfactory | 2017-02-16 19:10 | | Comments(0)
   

フリーランスのデザイナー 仕事の合間
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